2012年10月4日木曜日

おいしいコーヒーのいれ方 part-7 最終回・サイフォンとフレンチプレス

 僕が最初に本格的に師事したお師匠さんは珈琲サイフォン株式会社の社長なわけだから、当然サイフォンの手ほどきを受けている。
これが本家コーノのサイフォンだ。


この会社の製品は、漢の珈琲って感じでいちいちかっこいいのである。それに、コーノではすでにろ過にネルを使っていない。サイフォン用のペーパーを開発して使い捨てとしたのだ。ただでさえ、面倒なサイフォンの儀式のひとつが大幅に簡略されているわけで、この一点だけでも、現在他社のサイフォンをお使いの方は乗り換えを検討する価値があると思う。例によってペーパーを入手しにくいという欠点はあるのだが。

さてサイフォンで使う豆の挽目についてだが、少し細めという話をよく聞くが、本家コーノではそんなことはまったく言っていない。ドリップと同じ中挽きを使っている。サイフォンは浸漬法であり、湯の浸透力を使って抽出する。細挽きにするのはエスプレッソのような外部から圧力をかけて抽出する場合に使う方法だ。エスプレッソでは内部で9気圧もの圧力をかけて短時間で強く抽出するため細孔内の800種類の化学物質を露出させておくぐらいの細かさにしておく必要があるからなのだ。

粉の量もドリップと同じ一人分12g。ドリップと違って一人分で入れても四人分で入れても味は変わらない。そして、ドリップの時いい忘れたことだが、ドリップもサイフォンも2人分は24gでいいのだが、人数が増えて例えば4人分になったら40gで充分入る。そしてサイフォンではきっちり40gにしたほうがいい。サイフォンはいろんな場面で厳密さが要求される入れ方なのだ。

後は加熱器に点火する前にかならずフラスコの下部に水がついていないようにどんな場合も一回かならず乾いた布で拭いて欲しい。一滴でも水滴がついた状態で点火するとかなり高い確率でフラスコが割れる。そうなると結構な惨事になるのでご注意いただきたい。

サイフォンには構造的に大きな欠陥があって、それは短時間ではあっても珈琲豆を100度のお湯で煮沸する、ということである。煮沸させすぎれば灰汁まみれの珈琲になってしまう。だから、この煮沸の時間を厳密に守る必要があるのである。
そしてその時間は、二人分で50秒。四人用以上で40秒。
しかしこの中には粉をかき混ぜる時間が入っているため、実際の運用ではお湯が上がってきてポコッと表面が割れたら素早く竹べらでかき混ぜて(その時ぐるぐる回してはいけない。縦に切り込むように混ぜるのだ)そこから二人分40秒、四人分30秒と測るのがやりやすいと思う。

サイフォンの良い所は数値を守って入れれば必ず同じ味に仕上がることだ。ドリップは湯の入れ加減で毎回味が変わる。そこが面白いと僕などは思うのだが。


次に、フレンチプレスについて。

これがたぶん世界で最も多く使われているボダムのフレンチプレス。「紅茶に使うやつですね。珈琲も入れられるんですか」と言われることがよくあるが、これは珈琲のために作られた器具で、もちろん紅茶もいれられないこともないが、対流が起きにくい構造になっているからできるだけ使わないほうがいいだろう。

まず、粉は荒挽き。
金属製のメッシュでフィルタリングするので、詰まらないようにしたいのだ。

この器具についているスクープは7g。ドリップやサイフォンのように杯数が増えた時に粉の量を減らす必要はないと思う。ドリップと同じように90度くらいの湯を入れる。
湯を入れたら竹べらでかき混ぜる。(のに、なぜかこの器具にはかき混ぜる道具がついていない。不思議だ。)サイフォンのようにぐるぐる回さずに縦に切り込むように混ぜて欲しい。
さて、この器具も浸漬法なので時間が重要だ。
4分から4分半かかる。これ、けっこう長い。何故かというと荒挽きにしているから。時間をかけないと抽出できないのだ。珈琲は湯に漬けてから1分半くらいで急速に灰汁を生成する。私がこの抽出法を推奨しない理由がここにある。
プレスを愛好する人の主な理由は金属製のメッシュが、ドリップでは紙に吸われてしまう脂分をきちんとカップに出してくれる、というものだが、そのメッシュが荒挽きを要求し、長時間の浸漬を強いて、余計な成分を生成しているのである。
もうひとつ、これはサイフォンにも共通するのだが、飲んだ後の器具の掃除が大変さだ。抽出後、ガラス容器にべったりはりついた粉を流しに捨てるのも手間だし、当然油脂分をたっぷり流したそのあとの排水口の掃除はちょっと想像したくない。
もちろん、どの方法も一長一短あり、どちらを選ぶかは味次第ではあるし、現在使っている器具を使い込むことで上手に入れられるようになるというのも大事なことだと思う。

さてここまで7回にわたって、珈琲の入れ方について書き連ねてきた。最後までお付き合いいただいた皆さん、本当にありがとうございました。
ここで一旦シリーズを閉じて、また機会を見て、珈琲の歴史や薀蓄系小話などを書いていきたい。
それぞれのご家庭に美味しい珈琲の香りが満ち、幸せな時間を彩ってくれることを心からお祈りします。

-end-

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