2013年2月8日金曜日

劣等生の日々 カフェジリオ・コーヒーストーリー part-2

KONO式珈琲塾での私は、完全な劣等生で、まるっきり家事もできない男が挑むには高すぎるハードルだったと後悔しました。

KONO式のペーパードリップは、円錐フィルターに24gの中細に挽いた粉を入れ、それをまず強く振って厳密に平らにすることから始めます。
そして、その中心に90℃以上にした湯を静かにポタポタと滴状に注湯していくのですが、これがドバっといっちゃったり、真ん中から流れてツツーっと周辺部にいっちゃったりすると、見ている先生から「ああ〜」と悲痛な声がこぼれます。

周りのみんなは何度かトライして成功するのに、私は何度やってもこれがうまく出来ずに、先生も「ちがう、ちがう、こうね、こう!」と手振りで教えてくださるのですが、やっぱり再現できず・・
「なんで、そうなっちゃうの〜」と言われるのですが、それはこっちが聞きたい・・

しかし、カタチが再現できた同期生たちの珈琲も、そのお味は、となると、やはり河野社長の淹れた珈琲が特別すぎて比較することすらできません。
まるで魔法なのですよ。
で、魔法であるがゆえに、それは説明や学習によっては再現され得ないのです。

結局、在塾中にはマスターできず、その後河野社長のお父さんに指南を受けたという別の方に教わって、マスターすることになるのですが、それはまた別の話。

KONO塾は、抽出と焙煎の二本立て。焙煎の方も河野社長のマジックが炸裂します。

その前に、珈琲の焙煎について基礎的なことをお話しておきますね。
Part-1冒頭に、珈琲の味は焙煎によって生成する約800種類の化学物質によって作られていると書きました。
その800種類の化学物質は、焙煎によって豆の内部に生じた平均7μほどの小さな孔の中に生成します。
ですから焙煎の役割のひとつは、できるだけ中心部まで均等に火を通してなるべく多くの孔を作り出すこと、にあります。
火を通す時間が足りなかったり、強すぎる炎で焼けば、中心部だけが焼け残り、酸っぱい珈琲が出来上がってしまいます。

で、この中心部までムラなく熱するのに最も適した方法が、「空気で温める」という方法です。なので、世界的に珈琲の焙煎釜はくるくる回る円筒の内部に羽がついていて、絶えず空気中に豆を放り投げながら過熱するタイプが主流です。
河野塾でも使われている、富士珈機社のFUJI ROYALでは、「空気」で温めているのだから、と釜の中の空気量をコントロールする「ダンパー」という調整弁がついています。これはプロバットのような海外の釜には見られない機能なのですが、このダンパーと、ガスの量を調整して熱量をコントロールするレバーを操作しながら珈琲を焼いていきます。

口で言うのは簡単なのですが、中身の見えない珈琲豆の、しかも7μの孔のことなんか、いったいどうやって判断して焙煎していけばいいというのか。
これはとても難しいですね。

塾では、河野社長から一枚の紙が配られます。
珈琲の豆温度とバーナーの強さとダンパーの開け具合が書いてありました。その操作のきっかけは、豆が出す音と、豆の表面の色や皺です。
焼きながら少量のサンプルを取り出して確認できる機構がついていて(テストスプーンといいます)、温度や音の変化に注意しながら適宜実際に豆を見ながら操作していきます。

で、豆がハゼ始めたので、テストスプーンを引き抜くと、「ほら豆が膨らみ始めただろう」と言われますが、まあわかりませんやね。
チリチリと高い音のハゼに変化したところで、また引き抜くと「ほら、皺が出てきただろ。あとはこれが膨らんで油が出てくる一歩手前で釜から出すんだ。」って、一歩手前はどうやって知るのー?
で、わからないなりに、このあたりか!と思い切って豆を出すと、「ああー、5秒遅かったなー」って、わかんないってば。

何一つ再現できない、職人技の凄さにただ驚くだけの日々。
河野さんの珈琲への道が果てしなく遠いことだけがよくわかった河野塾時代でした。しかし、わからないなりに、社長の動作を見て、再現できない自分に苛立っていたあの日々こそが、その後、他のお師匠さんの仰ることを理解するための基礎体力になっていたのです。

...to be continued

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