2013年2月28日木曜日

豆が、珈琲のコトバで話しかけてくる。 カフェジリオ・コーヒーストーリー part-5(最終回)

承前

中野弘志氏のコーヒーセミナーから学んだことは実に多いが、確かにいちいち言語化できないことが多かった。
あえて文学的なアプローチを試みると、「豆が、珈琲のコトバで話しかけてくる」という感じか。

実務的なコトバにするならば、要するに煎りドメに至る豆の変化は、終局において「皺が伸びる」=内部の多孔質化が充分進んだ、という局面と「ふわっと煙が出る」=内部の油脂分が表面に出てくる直前まで来ている、という局面の兼ね合いで出来ていて、厄介なことに産地によって、その頃合いが異なっているということだ。

前回の最後に、少し煎りの足りないものと、それをそのまま再度焙煎機に放り込んで焼成を進めたものについてお話したが、ほんの温度にして2℃程度、時間にして5秒くらいの差なのだが、飲み比べてみると仕上がりの差は明らか。
もちろん酸味の残りなども気になるのだが、そんなこと以上に「味の力強さ」のようなものが違うのだ。

最近よく、店頭で生豆の種類を選んで注文すると、その場で焙煎して渡してくれるというお店を見かけるが、この場合、豆は100g単位で焼けることや、お客様をお待たせしないスピードが必要になってくる。
そのために開発された焙煎機がジェット・ロースターで、少量の豆を高熱で処理して90秒程度で焼きあげるのだという。

私も、珈琲豆は鮮度こそが最も重要であるという立場であるので、これでウマい珈琲豆が焼けるのなら、こんなにいいことはない。
マーケティング的な納得感も高く、広告効果も高いだろう。

しかし、20分かけて焼いた最終工程の5秒でこんなに味が変わってしまうのに、90秒で焼けてしまう機械の場合は、どこでどう煎り止めを判断しているのだろうか。見ている限りでは、タイマーで自動化されているようだった。

実際に何店舗かで豆を買ってみたが、どれも表面は焼けていても芯残りで、強い苦味の中に、これまた強い酸味が残るという味だった。

そしてまた、このように味の問題を「酸っぱい」と「苦い」というコトバに帰着してしまえるところにこの議論の次元の低さがあるように思う。

中野弘志氏の教えの画期的なところは、珈琲は「酸っぱくても、苦くてもダメ」で、味の議論はその先にある、というところにあり、まさにそこに一日拾万円の価値があるのだと私は思う。

であればこそ、その道ははるか遠くまで伸びている。
私は毎日焙煎をしながら、あの一日に覚えた、珈琲が焼けていく時の様々な表情や音の変化を思い出して、珈琲修行を始めるきっかけとなった河野社長の珈琲を自分でも再現できる日を夢見ているのだ。

The END

2013年2月25日月曜日

カーティス・フラー / ブルースエット


2月も今週で終わりですか・・早いですね。
今日のBGMです。
カーティス・フラーというトロンボーン奏者のリーダー・アルバム「ブルース・エット」です。

村上春樹の「アフター・ダーク」に登場するアマチュア・トロンボーン奏者がこの楽器を手にとったきっかけとして紹介されているFive Spot After Darkが収録されていることでも有名な盤です。
もちろん、アフター・ダークという書名もこの曲名に由来しているのです。

あまりにも印象的なリードメロディが頭にこびりついて離れないので、他の曲の印象が薄いのですが、ベニー・ゴルソンの必殺のスムース・テナーが炸裂する4曲目も聞き逃すべきでない佳曲だと思います。

2013年2月23日土曜日

タイム・トゥ・キル / ソフィー・セルマーニ

今日のBGMは、ジャズをお休みして、スウェーデンの女性シンガーソングライター、ソフィー・セルマーニの3rdアルバムをピックアップしました。

せっかくスウェーデンのアンプを買ったので、なにかスウェーデンの音楽を、と思って自室のCD棚を見ていたら、6年くらいまえに人に勧められてファーストから揃えていたのを思い出して、かけてみました。

北欧のSSWらしい、囁くような声と素朴なメロディはもちろん素敵なのですが、時折アコースティックギターで繰り返されるロックのリフっぽいメロディが新鮮。ディランやニール・ヤングからの影響を公言する彼女らしさも、また魅力的です。

が、それゆえにアルバムは素朴なサウンドと準ロック・サウンドが混在し、BGMには使いにくい側面もあり、そのバランスが一番よい3rdを今日はかけています。

音楽的には、2ndのプレシャス・バーデンが最もよいと思います。こちらも機会があったら聴いてみてください。

2013年2月22日金曜日

ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ vol.1


今日のカフェジリオ・ミュージックは少し古めのジャズで。
ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ vol.1です。

ジャズ評論家レナード・フェザーが、ドイツのデュースブルクという街で見つけたピアニスト。

この時の様子をレナードは「洞窟のようなクラブへの階段を降りると、5人の若者が演奏していた。赤い髪の少女が奏でるピアノは、長年ナチズムや戦争に苦しんだ国のものとは思えない素晴らしいリアル・ジャズだった。」と書いています。

なんかビートルズみたい。

で、彼はさっそくアメリカのレコード会社に売り込むべく、フランクフルトでデモ音源を録音。
この時の録音の8曲がBlueNoteから、4曲がMGMからリリースされます。
契約を継続したのはBlueNoteで、創業者のアルフレッド・ライオンがベルリン出身なのも関係があるのかもしれません。
で、このCDのリリースとなるわけです。
このCDの冒頭レナード自身がユタを聴衆に紹介するMCも収録されています。

当時の評論家の仕事っぷりが、いいですね。
やはりプロというのは口だけじゃなくて、行動が伴ってこそかな、という気がします。

演奏が始まると、二曲続けて哀愁ただよう短調の曲が香ばしくも力強いタッチで奏でられる。
ことにディア・オールド・ストックホルムは必聴で、マイルズやジョン・ルイスなどの有名な演奏とはテーマメロディの解釈が異なっていて、一聴同曲とは思わなかった。

ふーん。これがヨーロッパの中から見たストックホルムかあ、なんてこの間買ったスウェーデンのアンプから出てくる音に浸っております。

2013年2月21日木曜日

その講習、一日拾萬円也。カフェジリオ・コーヒーストーリー part-4

承前。
3時間のセミナーで、僕の目から数枚の鱗を落とした中野弘志さんの自家焙煎セミナー。

結論としては、珈琲という飲料が、焙煎によって作られる800種類の香味成分を抽出して飲むものであること。
さらにその香味成分が、加熱によって多孔質化した「孔」の中に生成されていることから、優れた焙煎とは、多孔質化の最大化と香味成分をより多く作り出すが、焦がさない、という最適点を見つけることに他ならない、
ということだとわかった。

そして、その最適点は、豆を育てる土壌によって変わる、ということ。
見極めるポイントは定量化できず、「状況判断」によって行うということ。
ゆえに、結局数こなさないとダメねってことがわかった。

しかし、闇雲に数をこなしているだけで身につくような技術でもない。やはり、経験豊かな指導者が横についてアドバイスを受けることが必要だ。

で、中野先生のご自宅で二日間マンツーマンのつきっきりでやってあげますよ、というセミナーにおいでなさいな、ということなのでした。
なんとお値段、二日間で弐拾萬円也。

でもねえ、この際背に腹は代えられないよなあ、と思った。
だって、今まで数人の「先生」と呼ばれる人に習ってきたわけだけど、それぞれに皆仰ることが違う。このまま確信を持てないまま、ズルズルいろんな人にお話聴いて回るのもいい加減疲れたし、そろそろ確かな理論持って、自分の味作り始めたいよな、と思ったわけです。

で、思い切ってお電話してみた。
自家焙煎でやりたいと思った経緯とか、今まで教わったこととか、洗いざらい話してみた。
そしたら、中野先生、「あ、そこまでやっていらしたのなら、一日で習得できるでしょう。拾萬円で結構です。ご都合の良い日は何時ですか?」とおっしゃる。

さっそく日を決めたら、翌日様々な国の焙煎された珈琲豆が合計1kg送られてきた。
とにかく、それを全部飲んで、舌が珈琲の味の違いがわかるようにしといてください、と書いてあった。
期日まで4日程しかない。
4日で一キロの珈琲飲むってのはけっこう骨ですよ。
結局半分くらいしか飲めなかったけど、まあ全種類飲んだ。
もう最期の方は、美味しいかどうか分かんなくなってたな。
で、電車に乗って横浜の先生のお宅に向かったのだ。

到着すると、どのくらい基礎的な知識が共有できているか、さらっと打ち合わせて、だいたい問題ないレベルだと確認して、もうさっそく焙煎に入る。

まず驚いたのは、この先生、珈琲豆を米のように「研ぐ」のだ。バケツの中で研いだ豆を新聞紙にあげて、荒く乾かしてある。
庭に別棟として設えられた焙煎室には、1kg用の小さな富士ローヤルが置かれていた。これは河野塾でもよく扱った機種で、500gくらいの少量でも綺麗に焙煎できる便利なものだ。

だが、やはり郷に入れば郷に従え。
中野先生は、ダンパーは投入する生豆の量に応じて、焙煎釜の容量を最適化するのが役割、と規定されていて、1kg釜で500g焙煎の場合は、ダンパーは開度50%、バーナーも強度50%で固定して、ひたすら煎り上がりの時間に集中する、というやり方。

しかし、30秒ごとくらいにテストスプーンを開けて、ああ今内部に大きな亀裂が入ったよ、とか、今皮の部分が割れ始めているんだよ、とか細かく教えてくださる。
とにかくこれをずっと一日中やるのだ。

途中集中力が切れて、シティローストくらいのところで上げてしまった時、先生は「お、それ半分とっとこう」と言って、半分を別のボウルにあけて、残りを再度釜に投入。何も無かったかのように焙煎を続けた。
「あとで飲み比べてみようね」と、普通におっしゃるので、焙煎の中断ってアリなんですか?と聞いてみたが、昔からダブル焙煎という手法があるそうで、まったく問題ないそうだ。
勉強になるなあ。

さて、この焙煎度比較、どうだったのか。
続きは次回。

インパルス・レコード・オムニバス/House That TRANE Built


カフェジリオ、今日のBGMのお時間です。
今日のお題は、インパルス・レコードの数ある名曲・名演をCD4枚組にコンパイルしたオムニバス盤、
The House That TRANE Builtです。


タイトルは、ほんのちょっと補って直訳すれば「ジョン・コルトレーンが建てた家」。インパルスがコルトレーンの大成功で大きくなったことを表しています。

有名なマザーグースの一曲「This is the house that jack built」を捻ったタイトルなんでしょうね。

今日はそのDisc1をかけています。

ギル・エヴァンス、オリヴァー・ネルソン、アート・ブレイキー、ベニー・カーター、カウント・ベイシー、コールマン・ホーキンス、ロイ・ヘインズ、フレディ・ハバート、チャールズ・ミンガス、そしてもちろんコルトレーン。

なんて豪華なオムニバス。

中でも2曲めのオリヴァー・ネルソン、Stolen Momentは、ドルフィーがフルートを、とかエヴァンスのピアノが、などという謳い文句などまったく必要ない、緻密に構成された作編曲の見事さが聴きどころだと思います。
美メロなしで、短い旋律を構築的に組み上げて音楽を作り上げている、ベートーヴェンの中期の作品群を思わせる、聴き応えのある楽曲ですね。

2013年2月20日水曜日

ビル・エヴァンス/ムーンビームス

今日のBGMは説明不要の名盤、ビル・エヴァンスのムーンビームスです。

説明不要と言いながら、説明書いてますが、あの天才ベーシスト、スコット・ラファロを自動車事故で失い、失意の底にいたエヴァンスが、チャック・イスラエルを招いて作った復帰作。

どこまでも美しい音像から、よく「ジャズ、というよりはイージー・リスニング」という評価をみるアルバムだが、これはエヴァンスのフレーズの「かっこよさ」を存分に楽しむアルバムなのだと思います。ぜひ四曲目の「星へのきざはし」を聴いてみて欲しい。メロディの間に挟み込まれた装飾音のどれもが文句なくカッコいいのよ

ところで、このジャケットの美女ですが、ベルベット・アンダーグラウンド&ニコのニコさんだという説が有力なのですが、なぜか納得感の高い一次資料がなかなか見つかりません。
どなたか、真相をご存知ないですか?

2013年2月19日火曜日

ディック・カッツ/ピアノ・アンド・ペン


おはようございます!今日のカフェジリオのBGMはこいつですよ。
ディック・カッツのピアノ・アンド・ペン。



あまりリーダー作はないが、ケニー・ドーハムとか、ヘレン・メリルがお好きなら名前を見かけたことがあるかも。
先週ご紹介したテディ・ウィルソンのお弟子さんでもある。

それにしてもオリジナル曲がいい!
一曲目の「ティモニウム」という曲の、軽快で洒脱なくせに、こっそり捻った展開。ドナルド・フェイゲンのジャズ・サイドに惹かれる人なら思わず唸ってしまうと思う。

2013年2月18日月曜日

リー・コニッツ&ブラッド・メルドー/ライブ・アット・バードランド


カフェジリオの今日のBGMです。

ブラッド・メルドーのライブ。リー・コニッツとの共同リーダー作ということになっている。


ベースはチャーリー・ヘイデン、ドラムスはポール・モチアンということで、サックス入りのクァルテットとくれば、誰だって70年代のキース・ジャレットのアメリカン・クァルテットを思い出すだろう。

しかし、実際にこのライブを聴いて思うのは、メルドーはキースのプレイがあまり好きじゃないんじゃないかな、ということだ。

キース・ジャレットの紡ぎだす音楽は、あくまでもある種の「陳腐さ」の中にあって、それでも心を動かす圧倒的な美しさを持っている。それは性善説のジャズ。
ケルンコンサートのあまりにもストレートな名演奏は、感動の中に、ほんのわずか気恥ずかしさを感じさせる。

メルドーは、右手と左手で異なるメロディを奏でながら、どこまでもわかりやすさを拒んでいる。だからこそ、レディオヘッドなどのポピュラーなロック曲を好んで題材に選んでは、ポピュラリティそのものを切り刻むようなアレンジを施すのではないだろうか。

そのような楽想にリー・コニッツはまさにうってつけだ。コードからの解放を目指したトリスターノ派の急先鋒。老いて円熟はしているが、かつて「ホリゾンタル」(=垂直的)と言われた急変化を伴うフレージングは健在。エリック・ドルフィーとはまったく違う地平に着地した老兵のプレイを今こそ聴こう。

2013年2月16日土曜日

ジャッキー・マクリーン/4,5 and 6


今日のBGMです。

ジャッキー・マクリーンの4,5and6。
ジャッキー・マクリーンの、と言ってしまっていいのだろうかと迷う、超豪華なメンバーで録られた名盤。


だって、管が、ジャッキーにドナルド・バード、そしてハンク・モブレイの三人って。もうこれだけのメンツですから、もちろんアンサンブルなんぞありません。おそらく大雑把に打ち合わせてテーマ振ったら、あとは勝手にバシバシソロ吹いて、勝手にビシビシ絡んでいくっていう流れでしょう。

でもばっちり音楽になってる。
だってピアノ、マル・ウォルドロンなんだもの!
ビリー・ホリディの歌伴で鍛えた音楽を包み込むチカラはさすがですね。
そういえば、マルの名盤「レフト・アローン」の一曲目のすごいサキソフォンもジャッキーだったね。

2013年2月15日金曜日

テディ・ウィルソン/フォー・クワイエット・ラヴァーズ


今日のBGMです。
テディ・ウィルソンのフォー・クワイエット・ラヴァーズ。
ジャケ買いでした(汗)。


大好きな「パリの四月」が入っているので、まずそれを聴いてみたのですが、今まで好きだったサド・ジョーンズの演奏もジャズらしい勢いが素晴らしいのですが、こちらはいかにもパリ!という感じの洗練された演奏で、とても素敵でした。
決して綺麗な音で繊細に弾くピアニストじゃないんですけどね。
なんか気品みたいなものを感じます。

2013年2月12日火曜日

低温投入法の是非、の前に カフェジリオ・コーヒーストーリー part-3

なんとかKONO式珈琲塾を修了したものの、このまま開業して成功するような気はまったくしなかったので、単発の喫茶店開業講座にいくつか参加してみました。

そのうちのひとつ、堀口珈琲工房を主宰される堀口氏の講座を受けた時、河野社長のお父さんに抽出を習ったという話を聞いて、俄然興味が湧いて、今度は堀口氏のセミナーに参加することにしました。

この抽出講座からは実に多くのことを学びました。
「ドリップは重力の力で湯を豆に通す」という言葉が、それまで河野塾でやってきた技術のすべてに明快な裏付けを与えてくれました。
「灰汁が出てくるのは、1分半から」という言葉が、ドリップのスピードを明快に決定付けました。
「エマルジョン=乳化現象」という言葉が、必要な湯の温度を確定させました。(このあたり詳しくは、当ブログの「おいしいコーヒーの入れ方」ラベルで御覧ください)

こんな言葉ひとつで、今までどうしても安定しなかったドリップが、すぐにピシっと決まるようになるのですから、不思議なものです。

練習のための明快な指針を得て、抽出に関しては目処がついたと感じていました。


問題は焙煎です。

河野塾では、まず釜に200℃の予熱をかけたあと、釜の火を消して豆を入れずに92℃まで冷まします。
で、釜が冷えたら豆を投入し、再度加熱を始めます。約20分ほどかけて焼き上げますが、その間、火の強さは徐々に強くしていき、豆が大きく膨らんでいくタイミングで火力を最大に。その後、ピチピチいいながら多孔質化していく段階では極弱火で仕上げていきます。
釜の中の空気量を調整するダンパーの操作も頻繁で、150度に達するまでは60%解放。豆が膨らんでいく工程では40%解放まで絞込み、多孔質化の工程で今度は80%まで解放し、最終段階で100%解放します。

その後、焙煎機メーカーにおじゃまして、いろいろな焙煎士さんのデータを見せて頂きましたが、こんなに釜を頻繁に操作するケースはなく、大抵は火力とダンパーの解放量は、釜の容量における生豆投入量の占有率で決めて、最初から最後まで固定でいくことが多いのです。

また、豆の投入は、予熱をかけた200℃の状態で行われるのが普通で、冷めるまで待ったりはしません。あまつさえ、一品種焙煎した余熱を次の品種の焙煎につかうべく、豆を釜から出した後、すぐに次の豆を投入することが推奨されています。
この方法は、確かに効率がよく、全体の作業が短時間で終わります。
しかし、ここにこそ河野社長のこだわりがあり、だからこそ、この焙煎法を「低温投入法」と呼んでいるくらいです。

では、その味への影響度というのはどれほどのものなのでしょうか。
それを確かめるのは実に難しいのです。

何故なら、結局のところの珈琲の焙煎の成否を決める最大のポイントは、どこまでいっても「どこで煎り止めるのか」にかかっているからで、如何に途中の釜の操作に神経を使っても、最後の煎り止めのポイントを正しく見極められなければ結果は失敗。
しかも、その煎り止めは、5秒違えばまるっきり味が違ってしまうという、極めてデリケートなものでした。

まずは、ここをマスターする必要がある。
しかし、習っている間中、遅い!だの、早い!だのと言われて体得できるようなものではないような気がして、今度は焙煎法に絞って、セミナーを探してみました。
で、見つけたのが旭屋出版さんが主催される中野弘志さんという方のセミナー。

この3時間ほどのセミナーで僕の目から落ちた鱗の数は何枚だったか。
「焙煎に浅煎りも深煎りも無い」とか、「ブレンドは作品だ。せっかくだからストレートを、などと言われない店を目指せ」とか、漠然と疑問に思っていたことに対する理知的でストレートな解答がドバドバ飛んでくるではありませんか。
そして、最後に「結局、焙煎の成否は煎り止めで決まる。そしてそれは適切な指導者の付き添いの元たくさんの焙煎をこなすしかない」ときて、希望者には私が二日間つきっきりで、ご指導いたします」とおっしゃるではないですか!
それそれ、それだよー、と思いながら資料に目を落とすと、「焙煎講座二日コース、二十万円」とあるではないですか!!

二十万・・
え?どうしたかって?
それは次回のお楽しみ。

...to be continued.


2013年2月9日土曜日

新しいケーキ、いろいろお作りしております。

新しいケーキ、いろいろお作りしております。
まずは、
ショコラナッツ

ショコラナッツ、と申します。
ヘイゼルナッツのバタークリームとクラッシュした胡桃の下地に、パティシエお得意のクレーム・ブリュレが載せてあります。

次に、
チーズのタルト
チーズのタルト、ですね。
レモン風味の効いたチーズに、クリスピーな歯ざわりを演出するシュトロイゼルを載せて、タルト生地に載せました。

そして最後に、
和歌山産キウイのシフォン
和歌山産キウイのシフォンケーキです。
またひとつシフォンのバリエーションが増えました。

どうぞお楽しみください。

2013年2月8日金曜日

劣等生の日々 カフェジリオ・コーヒーストーリー part-2

KONO式珈琲塾での私は、完全な劣等生で、まるっきり家事もできない男が挑むには高すぎるハードルだったと後悔しました。

KONO式のペーパードリップは、円錐フィルターに24gの中細に挽いた粉を入れ、それをまず強く振って厳密に平らにすることから始めます。
そして、その中心に90℃以上にした湯を静かにポタポタと滴状に注湯していくのですが、これがドバっといっちゃったり、真ん中から流れてツツーっと周辺部にいっちゃったりすると、見ている先生から「ああ〜」と悲痛な声がこぼれます。

周りのみんなは何度かトライして成功するのに、私は何度やってもこれがうまく出来ずに、先生も「ちがう、ちがう、こうね、こう!」と手振りで教えてくださるのですが、やっぱり再現できず・・
「なんで、そうなっちゃうの〜」と言われるのですが、それはこっちが聞きたい・・

しかし、カタチが再現できた同期生たちの珈琲も、そのお味は、となると、やはり河野社長の淹れた珈琲が特別すぎて比較することすらできません。
まるで魔法なのですよ。
で、魔法であるがゆえに、それは説明や学習によっては再現され得ないのです。

結局、在塾中にはマスターできず、その後河野社長のお父さんに指南を受けたという別の方に教わって、マスターすることになるのですが、それはまた別の話。

KONO塾は、抽出と焙煎の二本立て。焙煎の方も河野社長のマジックが炸裂します。

その前に、珈琲の焙煎について基礎的なことをお話しておきますね。
Part-1冒頭に、珈琲の味は焙煎によって生成する約800種類の化学物質によって作られていると書きました。
その800種類の化学物質は、焙煎によって豆の内部に生じた平均7μほどの小さな孔の中に生成します。
ですから焙煎の役割のひとつは、できるだけ中心部まで均等に火を通してなるべく多くの孔を作り出すこと、にあります。
火を通す時間が足りなかったり、強すぎる炎で焼けば、中心部だけが焼け残り、酸っぱい珈琲が出来上がってしまいます。

で、この中心部までムラなく熱するのに最も適した方法が、「空気で温める」という方法です。なので、世界的に珈琲の焙煎釜はくるくる回る円筒の内部に羽がついていて、絶えず空気中に豆を放り投げながら過熱するタイプが主流です。
河野塾でも使われている、富士珈機社のFUJI ROYALでは、「空気」で温めているのだから、と釜の中の空気量をコントロールする「ダンパー」という調整弁がついています。これはプロバットのような海外の釜には見られない機能なのですが、このダンパーと、ガスの量を調整して熱量をコントロールするレバーを操作しながら珈琲を焼いていきます。

口で言うのは簡単なのですが、中身の見えない珈琲豆の、しかも7μの孔のことなんか、いったいどうやって判断して焙煎していけばいいというのか。
これはとても難しいですね。

塾では、河野社長から一枚の紙が配られます。
珈琲の豆温度とバーナーの強さとダンパーの開け具合が書いてありました。その操作のきっかけは、豆が出す音と、豆の表面の色や皺です。
焼きながら少量のサンプルを取り出して確認できる機構がついていて(テストスプーンといいます)、温度や音の変化に注意しながら適宜実際に豆を見ながら操作していきます。

で、豆がハゼ始めたので、テストスプーンを引き抜くと、「ほら豆が膨らみ始めただろう」と言われますが、まあわかりませんやね。
チリチリと高い音のハゼに変化したところで、また引き抜くと「ほら、皺が出てきただろ。あとはこれが膨らんで油が出てくる一歩手前で釜から出すんだ。」って、一歩手前はどうやって知るのー?
で、わからないなりに、このあたりか!と思い切って豆を出すと、「ああー、5秒遅かったなー」って、わかんないってば。

何一つ再現できない、職人技の凄さにただ驚くだけの日々。
河野さんの珈琲への道が果てしなく遠いことだけがよくわかった河野塾時代でした。しかし、わからないなりに、社長の動作を見て、再現できない自分に苛立っていたあの日々こそが、その後、他のお師匠さんの仰ることを理解するための基礎体力になっていたのです。

...to be continued

2013年2月7日木曜日

珈琲焙煎修行のはじまり カフェジリオ・コーヒー・ストーリー part-1

珈琲の旨味成分である約800種にも及ぶ化学成分は、焙煎によって生成され、一週間で約60%が消失してしまう、「生鮮食品」です。
ですので、カフェジリオのコーヒーは、すべて店内で焙煎して、鮮度の高いものをお出ししています。

しかし、このカフェを作る時は、そんなことも知らず、最初は珈琲豆の自家焙煎など考えてもいませんでした。
ワンプッシュで一定量のホットコーヒーやエスプレッソがサーブされるマシンのカタログを調べたり、実物を見にショールームに出かけたりしていたくらいです。

と、並行して、自分たちのイメージに近い全国の喫茶店を廻っていました。
珈琲をたくさん飲むと、次第に味がずいぶん違うことがわかってくるのですね。
なにが要因なのかと調べてみると、美味しいところは大抵、自家焙煎か小規模なロースターの豆を使って、抽出も機械ではなく手で淹れていました。

ほほうそれならばと、喫茶店開業のための市民講座やカルチャースクール(探してみると、驚くほど多くの講座が開催されている!そんなに喫茶店やりたい人って多いのか)に行ってみようと、手始めに、当時住んでいた門前仲町の近くの図書館でやっていた市民講座に参加しました。

その講座では、いつも僕らが珈琲豆を買っていたお店の豆と、今朝、講師の方が焙煎してきたという豆を使って目の前でペーパードリップを実践してみせてくださったのですが、そりゃ自家焙煎じゃなきゃだめだわ、と納得できるほど、すべてのことが違っていました。豆の膨らみ。香り。そしてもちろん味。

近くの喫茶店の店主が講師だったので、さっそくその店に豆を買いにいくようになりました。
そして、勧められるままにKONO式のドリップ用器具一式を買って、教わったとおりに淹れてみたが、これがなかなかうまく入らない。
生来不器用な方だし、だいたい家事一つやったことがないのに、珈琲だけ突然上手に入れられるはずがないですよね。

しかし、それで「この珈琲という仕事、思ったよりおもしろい。よし、いっそ自家焙煎でやってやろうじゃないか。」と決心したわけです。
せっかくやるんだから、本家に学ぼうと、KONO式の開発メーカー「珈琲サイフォン社」の珈琲教室に参加しました。
そこで僕は運命の珈琲に出会うのです。

講師は、珈琲サイフォン社社長の河野氏。教室の参加者は四名でした。教室がはじまるとすぐ、KONO式ドリッパーの使い方を簡単にレクチャーしながら四人分のコーヒーを淹れてくれました。

そのコーヒーの味のことは、とうてい言葉では表現できません。
それはコーヒーという飲料が持つ美点を抽象的に束ねたような、恐ろしく完璧な味のするコーヒーだったのです。
自分自身のコーヒーの考え方の転換点になった大事な一杯なので、後から振り返って美化しているのかもしれませんが、そのくらいの衝撃を受けた一杯だったのです。

そしてその日から、河野さんが淹れたコーヒーを再現するための紆余曲折の日々が始まったのでした。

...to be continued

僕らはケーキで、春を待つ。


札幌は雪まつりを開催中。今が冬まっさかりですが、せめてケーキで待ち遠しい春を先取りしようと、「桜のロールケーキ」を作りましたよ。

栗のクリームに、桜の香りのスポンジ。桜の塩漬けも入っています。桜の開花宣言日までの期間限定商品です。
どうぞよろしく。

2013年2月6日水曜日

ロールケーキは進化する。

昨日アップした、バナナとパッションフルーツのロールケーキですが、作って食べてみると、またいろいろとイメージが湧くもののようで、一夜明けたら進化していました。


トップにシナモンのクリームを。さらにパッションフルーツを練りこんだチョコレートまで載せました。
うーん、これはうまいぞ。

2013年2月5日火曜日

パッションフルーツとバナナのロールケーキ、できました。

あたらしいロールケーキができましたよ。
カラメル風味の生地に、パッションフルーツとバナナのクリームを巻き込みました。


バナナとパッションフルーツって、意外によく合う。
バナナって美味しいんだけど、ちょっと最後甘ったるくなったりする。それがパッションフルーツの酸味で、最後まで美味しく食べられるんだなあ。

2013年2月1日金曜日

四種の柑橘のレアチーズムース、できました。


オレンジ果汁を絞ったレアチーズムースをパウンド生地の上に流しこんで、その上にデコポン、はっさく、伊予柑、オレンジの四種の柑橘を載せました。
とりあえず8個分、ご用意しております。
売れれば追加も考えます・・


新しいクッキー出来ました。

バレンタインが近づくと、彼女は新しいクッキーを焼き始める。
もちろん、我がカフェジリオのパティシエ殿のことですが。

で、今年のモデルが焼き上がりましたよ。


カカオチップをローストしたカカオニブとアーモンドの入ったバタークッキー、とココアクッキーにくるみを入れたものの2種類です。

今年のこだわりポイントを聞いてみると、「厚さ」だという。
やはりプロの言うことは素人にはわからんなあ、と思いながら口に入れてみたら、わかった!そゆことね。
質感を保ちながら口の中で溶けてくれる、この食べゴコチ。
そいつはこの絶妙な厚さが作っていたのだね。

これはバレンタインのセットの中だけじゃ勿体無いから、さっそくお店に出してみましたよ。ぜひお試しくださいね。